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徳島家庭裁判所 昭和48年(少)178号 決定 1973年3月20日

少年 M・O(昭三八・一一・二三生)

主文

少年を養護施設に送致する。

理由

(非行事実)

少年(当時八年)はA(当時一二年)と共謀のうえ、昭和四七年九月一八日午前一〇時ごろ、徳島県阿南市○○町○○○××の×○野○方において、同人管理、○野○子他三名所有の現金約七、一四〇円を窃取したものである。

(処遇)

一  少年は、昭和四七年六月、保護者である母にともなわれて福岡市内から阿南市に転居し、同月二九日、阿南市内の○○小学校に転入学したが、怠学を続け、阿南市内やその周辺をはいかいする等していてたまたま同年九月一六日、教護院を無断外泊して徒遊中の上記Aと知り合い、以後Aと連れだつて徒遊していたところ、遊興費に窮し、Aから誘われるとたやすくこれに同調して本件非行に及びさらにその直後徳島市内に出て来て同市内をはいかい中補導されたものである。

二  少年の知能は普通域であるが、学習意欲に乏しく、小学校入学以後慢性的な怠学を続けており、後記のような母の性格ないし人格傾向の影響を受けて欲求不満に直面すると攻撃的となる性格があるうえ、長期間の怠学のために少年の年齢を考慮しても社会性が著しく欠けていることが認められる。

三  少年の父母は少年が五歳時に離婚し、以後少年は母に養育されてきたが、母は自己本位性が著しく強い異常性格者であるうえ、しばしば学校、警察、児童相談所等の諸機関から少年を登校させるよう注意を受けてもこれに耳をかそうとせずかえつ反発的な態度を示して少年が長期間怠学して徒遊するのを放任し、日々の生活に迫われて少年の身の廻りの世話とか昼食の用意など殆んどしておらないのに何ら意にかけず、しかも本件非行前の昭和四七年七月には少年が児童相談所に一時保護され、児童相談所の勧告で、一たん少年を養護施設に入所させることに同意しておきながらその後前言をひるがえすなどその保護能力には全く期待がおけない。

四  以上に認定したところによると少年の家庭環境は少年の福祉を著しく阻害するものであつて、少年を在宅のまま補導することは極めて困難であるといわざるをえない。

そこで、少年の健全な育成を図るためには、少年を養護施設に送致して学校教育を受けさせるとともに生活指導をあわせ行うことが最も適当であると考えられる。

(法令の適用)

非行事実については刑法第六〇条、第二三五条、保護処分については少年法第二四条第一項第二号をそれぞれ適用する。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 福家寛)

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